米国議会によるスーダン民政移管法の可決について

令和3年1月6日
米国議会によるスーダン民政移管法の可決について

1.2020年1月1日(米国時間)、米国議会が「2021年度国防権限法案」を再可決したことに伴い、同法案の一部として提出されていたスーダン民政移管法(注:正式名称は「2020年スーダン民政移管・説明責任・資金透明性法(SDTAFTA:Sudan Democratic Transition, Accountability, and Fiscal Transparency Act of 2020)」)が正式に成立しました。
 
2.今般可決された法案は、米大統領に対して、2021~2022会計年度中、年間計1億3,000万米ドルを対スーダン支援予算として活用することを認めるものであり、その内訳は次のとおりとなっています:(1)民主的統治、法の支配、人権、基本的自由に対する支援(年間2,000万米ドル)、(2)開発プログラムに対する支援(年間8,000万米ドル)、(3)紛争緩和に対する支援(年間2,000万米ドル)、(4)戦争犯罪、人道に対する罪、集団虐殺の責任追及に対する支援(年間1,000万米ドル)。
 同時に、当該法案では、スーダン側の事情変更等によってこれらの支援継続が米国の国益に資さないと判断し得る場合、支援の提供を停止する権限が米大統領に認められています。
 
3.スーダンの債務救済支援について、当該法案では、スーダン政府が財政透明性の改善に向けた措置を講じたとする米大統領の「認証」を関連の米議会委員会が受理した後、米国務省及び米財務省は国際金融機関や他の債権国とともにHIPCイニシアティブの前進に取り組むとしています。
 上述の措置に含まれるものとして、治安・諜報機関の資金・財産に対するシビリアンコントロールの確立や、治安・諜報機関の関連支出に関する予算透明性の確保、治安・諜報機関の管轄下にあるすべての企業の株式保有の特定、及び右株式の財務省または特定の文民統治機関への譲渡等が挙げられています。
 
4.その他多国間金融支援についても、当該法案では、スーダン政府が民政移管や文民統治の促進に向けた措置を講じたとする米大統領の「認証」を関連の米議会委員会が受理しない限り、米財務省は各国際金融機関の米国代表理事(Executive Director)に対して、各機関のスーダンに対する融資・信用・保証の延長・拡張、または資金活用における投票を棄権するよう指示するものとしています。ただし、基礎生活支援(Basic Human Needs)や民主主義、ガバナンス、公金管理の促進に関する融資、信用、資金的・技術的支援はこの限りではないとされています。
 上述の措置に含まれるものとして、2021年5月以降遅滞なく主権評議会(注:スーダンの国権を代表する機関)の長を文民が務めること、暫定立法評議会(注:スーダンの移行期間中の立法府)が憲法宣言文書の規定に基づき発足されること、独立した国際監視の下で自由・公正な総選挙が行われ、選出された大統領が束縛なく就任すること等が挙げられています(注:総選挙実施前の「認証」受理の場合は、治安・諜報機関の構成員に人権侵害行為の刑事免責が認められないことを明確にした法改革等の措置を求めている)。
 
5.当該法案はこのほかにも、スーダン治安・諜報機関に対する米国の支援の制約や、スーダン政府高官、その他個人に対する米国の制裁発動の条件(スーダンの平和・安全保障・安定を脅かす重大な行動・政策、スーダン国民の市民権・政治的権利や同国の民政移管を妨げる重大な行動・政策、腐敗・汚職、深刻な人権侵害、スーダンの天然資源の違法搾取等)等を規定しています。

【参考情報】
提出法案原文(英語)のPDFダウンロード・リンク
https://www.congress.gov/116/bills/hr7682/BILLS-116hr7682ih.pdf